「龍生兄さんもご存知でしょうけど、在義兄さん、わたしのこと全然気にしてませんでしたからね」
「ひでえな、お前」
「………」
幼馴染二人に挟まれた在義は、目を瞑って、ついでに耳も瞑りたい心境だった。
「でも、探しに来てくれたのが在義兄さんで、桃ちゃんに逢ったら――愛せるって、思ったんです」
「………」
龍生は黙って続きを待った。
「在義兄さんが選んだ人だから、愛するんだ、とか、愛さなくちゃ、じゃなくて、わたしはこの子を愛せるって、思ったんです。そう思ったら、桃ちゃんが可愛くしか見えなくなりました。生まれた咲桜ちゃんもとっても可愛い。……わたしは桃ちゃんと、友達になりたいって思いました」
「………」
「実際、桃ちゃんがどう思ってくれたかはわかりません。でも――今では在義兄さんより桃ちゃんの方がすきかもしれないってくらいですよ?」
「―――」
「……今日は在義を痛めつける日だったか?」
夜々子の言葉に、在義が槍でも刺さったようなダメージを喰らった。
それを半眼で見る龍生。
在義をここまで痛めつけられるのは、娘二人と夜々子だけだった。
桃子は特殊な位置とでも言うのか……『在義の中身』みたいな子だったから、桃子のことで在義が傷つくことはなかった。