「なんというか……賑やかだねえ」
呟いた在義に、龍生はため息を返した。
ワケありの二人の結婚式。
でも、そんなもの微塵も感じさせない。
「お前の娘だ。規格外でトーゼン」
「流夜くんはお前の子どもみたいなものだしねえ」
「だからっておめえ、俺のこと殴った道理じゃねえぞ」
龍生は眉間に青筋立てて言ってやった。
流夜と咲桜の結婚が正式に決まったとき、「軽く一回でいいから殴らせろ」といきなりぶっ飛ばしてきやがったのだ。
そこで殴り返して喧嘩になる二人ではないのだが、文句は散々言ってやった。
理由はやっぱりそれか。
「どっちかって言うと流夜はお前の後継」
「三人とも、見つけたのは龍生だろ。俺がもらっちゃっていいのか?」
幼い頃の流夜と降渡を引き取ったのは、当時刑事だった龍生だ。
「子どもが親の後継者んなっておかしかねえだろ。すきにこき使え」
「非道い育ての親だな。まあ、――こき使ってやるけどね?」
昏(くら)い瞳をする相棒。
龍生、自分から振った話だが、今後の流夜に同情してしまった。
「駄目よ、在義兄さん」
なだめるように言ったのは、夜々子だった。
龍生はほっと息を吐く。
生まれたときから在義の幼馴染なんてやってるからか、夜々子は在義にはっきりものが言える貴重な人物だ
「夜々子――」
「流夜さんをこき使うのはわたしです。わたしの咲桜ちゃん掻っ攫った覚悟があるなら、わたしのいびりくらい耐えられるはずですから」
「………」
在義の、幼馴染だった。
「……夜々子、お前、こいつが桃子と結婚するって知ったとき、大丈夫だったのか?」
「え? 大泣きしましたよ? ついでに家出しました」
「え」
龍生の知らない話だった。
「夜々ちゃん」
在義が咎めるような眼差しを向けるが、夜々子は、ほほっと笑んだまま続けた。