吹雪は苦笑をこらえきれずに、半笑いの顔で言う。

「素直に言いなよ。憎まれ口叩きに来たんじゃないでしょ?」

甥にそんなことを言われ、愛子はぶすくれた顔をする。

――が、すぐにそれも消した。

刹那、真面目な顔をしたあと、蘭の花のような華やかな笑みを見せた。

「ちゃんと言ってなかったわね。流夜くん、咲桜ちゃん。結婚おめでとう。生涯幸せでいなくちゃ、あたしが企んだ意味がないわ。そんなこと赦さないから――ずっと幸せでいなさいね!」

「当然」

「でもそれには、マナさんもいてくれなくちゃダメですからね?」

咲桜に切り返されて、愛子は一瞬言葉に詰まった。

それを見た吹雪が吹き出す。

「ほら、マナちゃん。素直さにかけてはマナちゃんが敵うわけないんだから」

「これでも素直に言ったわよ! あたしのひねくれは元々なの! って言うかもう時間やばい! 二人とも、出席できなくてごめんね。龍生先輩華取先輩! また今度相談あるんでお時間ください! それじゃっ!」

雷のように入って来た愛子は、風のように出て行った。

愛子とほぼ初対面の旭葵や絆は、そのテンションとパワフルさに呆然としてしまっている。

「い、今のはどなただ……?」

誰に訊くともなしに呟いた旭葵に、吹雪が答えた。

「僕の叔母だよ。警視庁所属で、警視庁時代の在義さんの相棒。流夜と咲桜のお見合い仕掛けた張本人。愛称は『歩く地雷原』」

「お、おお……? なんか迫力ある肩書だな……」

旭葵が、紹介だけで負けていた。

「旭葵は巻き込まれ体質みたいだから、マナちゃんには関わらないことを勧めるよ。絆ちゃんは仕事柄、仕方なしにしてもね」

「……俺ってそういう体質なのか?」

「流夜に関わっちゃってる時点で色々巻き込まれてるよ?」

「わたし、春芽さんのことは知ってたけどあんな台風みたいな人だったんだ……」

吹雪の助言で、ダメージを受ける旭葵と絆だった。