「お――っと?」

愛子に抱き付いたのは、咲桜だった。

「咲桜ちゃん? 箏子さんが作ってくださったんですって? よく似合ってる。今日も可愛いわよ」

「マナさん……ありがとう、ございます」

愛子の肩のあたりに額をあてるような恰好で、咲桜は囁いた。

その一言で、やられた。

「さ……咲桜ちゃんそんなこと言わないでよ~嫁にやりたくなくなるわよ~」

「マナちゃん⁉」

仰天した吹雪が思わず大きな声を出した。

咲桜を受け止めた愛子が泣きだしたのだ。

号泣という勢いだ。

「も、桃子ちゃんの代わりにって、思ってきた、のに……咲桜ちゃんに、辛い思いさせた原因、あたし、よ?」

「ううん」

咲桜は、そっと顔をあげた。

その表情は、微笑み。

涙をボロボロこぼす愛子に微笑みかける。

「それ以上のことをもらったの。マナさんのおかげで、私、大すきな人に逢えた。マナさんが、在義父さんの部下でいてくれたから、私には夜々さん以外にもお母さんが出来た。マナさん、いてくれて、ありがとうございます。マナさんが私の傍にいてくれて、本当に私、幸せです」

「まあ――愛子が企んでなきゃ、俺が咲桜に逢うのももっと遅かったかもしれないしな」

流夜が隣に咲桜の隣に立つと、咲桜の嬉しそうな顔が更に色づく。

「減らず口ねー流夜くんは」

「おかげさまで。でも愛子、お前の企みには正直に言って、今まで受けた被害諸々を帳消しにしていいくらいには、感謝している」

「……今のが流夜くんの最大のデレなのよね。いいわ。帳消しにしといてもらいましょうか。これからもっと色々面倒かけてあげるから」

「マナちゃん」

と、吹雪が愛子の肩を引いた。