「お前、前は娘ちゃんがこっちに関わるの嫌がってたくせに、大分態度変えたな?」
「咲桜が自分から踏み込んで来ちゃったからねえ。咲桜がやりたいって言ったことは止める気はなかったし。……嫌だったのは、咲桜が自分の出生を知るためにこっちへ入るつもりなら、止めようと思ってただけだよ」
「お前には痛くもねえ腹じゃねえか」
「でも、少し嫌なもんだよ。……父親(自分)だけじゃダメだったのかな、ってさ」
「ふーん? そんなもんか」
「そんなもんだよ」
「にしても……自分の結婚式で友達に説教するって……」
「それは夜々ちゃんに言って」
在義の隣では、夜々子が口元に手を当てて上品な笑みを見せている。
……龍生、言わないで置いた。
龍生は、話を変えた。
「それよかあいつは来ねえのか? この縁組の仕掛け人だろうに」
「仕事次第だってさ。まあ愛子なら――
「はーい! 流夜くんと咲桜ちゃんのキューピッド登☆場!」
両開きの扉を勢いよく開けてやって来たのは、春芽愛子(かすが まなこ)だった。
今日も艶やかで華やかな愛子は、胸を張ってのたまった。
「お、みんな揃ってるねー。初めましての人もいるかな。警視庁所属の春芽愛子よ。流夜くんと咲桜ちゃんのお見合いを仕掛けた張本人よ! 感謝しなさい流夜くん!」
「ほんとナニサマだお前は」
びしっと指さす愛子に、流夜はため息をついた。
そんなの愛子は気にしない。
「申し訳ないけど、式には参列出来ないの。咲桜ちゃんの花嫁姿と流夜くんの仮装大賞を見るために時間作りたかったのだけど、これが精いっぱいで」
すまなそうに顔を歪める愛子。
それは本当のようで、仕事を抜けて急いで来てくれたらしい。
礼装ではなく仕事用のスーツだ。