「《二人目のるなちゃん》は、お前には抱えきれない。それはわかってるな?」
「わかってる。いくら報道系に入ったからって、行く先々で身寄りを亡くした子を引き取って育てるなんて、現実的に不可能だ」
「私や笑満も、自分の家族がある。るなちゃんの存在と、天秤にかけなければいけないときもあるだろう。それも承知か?」
「承知してる。咲桜と笑満には、あくまで『お母さん代わり』をしてほしい。本物の『お母さん』じゃない。るなの本当の家族になるのは、俺だけ」
「るなちゃんを引き取ったら、お前の学生生活や報道カメラマンとしての活動に、幾分制限がされる。それでもいいのか?」
「いい。今俺が一番やりたいことは、るなを育てることになった」
「―――わかった」
咲桜はそっと身を屈めて、るなに目線を合わせた。
笑満も、咲桜の隣で同じようにする。
「怖い感じになっちゃってごめんね、るなちゃん。私は神宮咲桜。頼の幼馴染で友達だよ」
「はじめまして、ね、るなちゃん。松生笑満です」
「あ……くさなぎ……るな、です……」
頼の手をぎゅっと握って、るなは精一杯に口を動かした。
なまりはあるが、日本語として聞き取れる。
「日本語喋れんだね」
笑満が頼を見上げる。
「家では日本語会話だったんだって。一応、母国語以外にも日本語は、大体喋れる」
「そっか。るなちゃん、何歳ですか?」
「えと……さん、さい……」
「三歳かあ。ちゃんと言えて偉いね」
笑満がよしよしと頭を撫でた。
最初はびくっとしたが、るなの表情がやわらいだ。
「流桜、こっちおいで。流桜と同い年だよ」
咲桜が呼びかけると、龍生の腕から降りて、とてとてと小走りでやってきた。