「るな」
「そうじゃないよっ! まさか誘拐⁉」
笑満が顔を真っ青にして叫ぶ。
「そんなことしないよ。捕まえる側の人がわんさかいるのに」
「じゃあ――まさかお前の――」
顔を紫色にして引き攣る咲桜。
花嫁の表情じゃない。
「るなの年齢考えてよ。俺はずっと咲桜たちと一緒だっただろ」
頼はいつも通りのんたりとしている。
遙音が止めに入った。
「頼、どうしたか説明しろよ。肝心なこと言わないから二人が誤解するんだろ」
うん、と、遙音の提言には素直に肯いた頼だった。
「るな、テロ事件に巻き込まれて家族を亡くしたんだ。頼れる身内はもういない。だから、俺が育てるって決めて連れて来た」
「「―――」」
咲桜と笑満が刹那、言葉を失った間に、頼が礼装のスーツのまま素早い動作で土下座した。
「なのでお願いしますっ! 咲桜と笑満とオト、俺と一緒にるなを育ててください!」
「初っ端から他力本願かよお前。つーか、それはほんとなわけ? 勝手に連れて来てはないんだな?」
確認する遙音に、また、うんと肯く。
「だって俺、女の子の接し方なんて知らないし。咲桜と笑満がお母さんになってくれたら絶対いい子に育つから。あと、るなは日系で、本名はルナ・クサナギっていう。現地の警察にはちゃんと交渉して、正規のルートで連れて来た」
「本気なわけか……」
頼の説明に、遙音はため息をついた。
すっと、前に出たのは咲桜だった。
「頼。立ち上がって」
「……はい」
咲桜と頼の目線がかち合う。
咲桜は鋭い視線のまま問いかけた。