「そうだねえ。宮寺くんも、今や遺伝子学の第一人者の位置だっていうのに、プライドじゃなくて、感情がゆるさないんだろうね」
憧れた。認められたい。
ただ、その名前がつく感情だけが。
「神宮はほんとに咲桜以外どうでもいいっすから、宮寺の心中思いやり、なんてしないですし」
「咲桜以外どうでもいい、ね……」
それがあの子の弱さだって、気づいてるのかな。
在義の呟きは、騒ぐ琉奏と抑える旭葵、からかう降渡と吹雪、そしてそんなことより咲桜を見ていたい流夜たちの喧騒に掻き消えた。
「咲桜、頼は?」
遙音までが在義の隣で傍観者に徹しているので、笑満は咲桜の隣に来た。
咲桜は苦笑する。
「一応、式には間に合うように来るとは言ってた。でもあいつ、どこの国にいるかわからないからなあ」
「せめて大学は出てほしいよね。いいとこ入ったんだから」
頼は現在、流夜と斎月が最初に卒業したアメリカの大学に在籍している。
だが、道を報道カメラマンと定めて以来色んな国を歩いている。
なんでも、流夜の友人である蒼たち十三桜の一人が世界中を放浪している人だそうで、逢うことがあってからその人の影響も受けてしまったらしい。
「頼に写真撮ってもらうのは約束だから、来てもらえればとは思うけどねー」
「やっぱ頼ほど腕のいい人いないしね」
咲桜と笑満が談笑していると、ノックがあって扉が開かれた。
「――咲桜、笑満。ただいま」
姿を見せたのは、片手にカメラを構えた頼だった。
「頼! おかえ――
「もう遅いよ。――って、その子はどうした⁉」
何故か、頼のもう片手は、初めて見る小さな女の子に繋がれていた。