「おい新郎。さすがに琉奏が可哀想になってきたよ。あいつ、お前のことすきなんだからさー」

降渡が、ぽんと流夜の肩を叩いた。

流夜は思いっきり嫌そうな顔をする。

「何言ってんだ、気味悪い」

トドメの追撃だった。

琉奏がくずおれそうになるのを、旭葵が慌てて支えてやった。

「そういう意味じゃねーよ! 雲居も誤解される言い方するな!」

「ほかになんて言やぁいいの。琉奏も、りゅうの『咲桜ちゃん以外どうでもいい』は知ってんだろ?」

「娘さんと張り合う気はないからな⁉ そこへ並べるな!」

「え、咲桜ちゃんに対抗してたんじゃないないの? 琉奏」

「お前は全部わかっててそういうこと言ってんだろ! 弥栄、絶対にあいつらに毒されるなよ。お前はそのままいい奴でいてくれ」

「え? えーと……」

急に話を振られて、旭葵は当惑している。

こそっと、遙音が在義の傍に寄ってきた。

「すみません華取さん。泥沼なのは神宮の方でした……」

「みんな仲いいよねえ。なんだかんだ流夜くんも、宮寺くんを式に呼ぶんだし」

「否定出来ないっすね」

遙音も、苦笑がもれた。

琉奏は流夜に憧れて学問の世界に飛び込んだ奴だ。

旭葵を『友人』と言ったことが羨ましかったのだろう。

琉奏は知り合って何年経っても、『知り合い』でしかないから。

「おまけに宮寺は相棒のことは知ってるし、頼られたことないっすからね。専門家として」

流夜の弟は、最初に犯罪学者としての学位を取り、のちに法医学者にもなっている。

法医学者イコール犯罪学に携わるわけではないが、流夜が『医学』で頼るのは弟の方だった。