「桃子ママなら、あたしも大すきになる自信ありますっ!」
続けて挙手したのは笑満だった。
「なんで笑満ちゃんまで参戦するの⁉」
「え? だって桃子ママって咲桜にそっくりなんでしょ? 咲桜のこと大すきだもん」
「やめて! ただでさえ華取家って泥沼なんだから自分から特攻していかないで!」
遙音は必死で止めるが、冷えた視線を向けられて背筋が正された。
「遙音くん?」
「すみません言葉のアヤです華取さん!」
在義に名前を呼ばれて、即謝った。
「まあ、うちが泥沼なのは否定出来ないけどねぇ」
「在義さんが認めちゃっていいんですか?」
降渡が言うと、「本当のことだし」と、在義はあっけらかんとしている。
「それに、桃子と咲桜が似ていると言っても、見た目だけですけどね」
そういったのは箏子だった。
「そうですね。……咲桜の性格は、桃より夜々ちゃんに似てると思うよ」
「嬉しいこと言ってくれますね、在義兄さん。ちなみに、桃ちゃんのスタンバイはばっちりです」
と、鞄の中から大事そうに何かを取り出した。
「……持って来たのか、夜々ちゃん」
「愛娘の結婚式ですもの。わたしと一緒にいてもらわなくちゃ困るわ」
夜々子が取り出したのは、桃子の写真だった。
遺影ではなく、華取家の庭で撮られたスナップショットだ。
「この方が桃子さんですか。咲桜にそっくりですねえ」
感想は、咲桜の親友の吹雪からだった。
「でも咲桜より繊細というか、か細い感じですね」
「咲桜は夜々ちゃんのおかげで随分強くなりすぎただけだよ」
在義はため息混じりだ。