咲桜と流夜は、結婚式は、身内だけの挙式のみにした。
身内と言っても、流夜の方は遙音や幼馴染の二人は来るし、咲桜の方も職場の先輩である絆や涼花が出席する。
そして、弥栄旭葵と宮寺琉奏もいる。
「じゃあこことおばあちゃんっ、にじゅうねんしたらなおにもつくってね」
「お安い御用よ。在義が認める旦那を連れて来たら、ですけどね?」
「――で、在義に認められた旦那? さっさと入って来い」
流桜子を抱っこしたまま、龍生がドアの方を向いた。
「―――」
呼ばれて姿を見せたのは、薄いグレーの衣装の流夜だった。
姿を見ただけで、咲桜のメーター振り切った。
だがそれは、咲桜だけではなかった。
無言で歩を進めた流夜は、そのまま咲桜を抱きしめた。
「りゅっ、お、お化粧うつっちゃうよっ」
「うん」
流夜のいきなりの行動には慣れているけど、人前でこれは恥ずかしい。
恥ずかしいのは咲桜だけではなかった。
「降渡、あれってほんとに神宮なの?」
「おいじんぐー、弥栄と宮寺が困ってるけどー」
流夜の咲桜べた惚れに慣れていない面々は、どう対処していいのかわからない。
「おいコラ腑抜け。ほどほどにしろや」
「痛っ」
龍生から一発、拳骨が流夜の頭に落ちた。
「龍さん痛い」と、咲桜を抱きしめていた腕をゆるめて、龍生を恨みの瞳で見る流夜。
「見ろ。在義が、実は流夜のが自分の血縁じゃないかって悩んじまってるじゃねえか」
「なんで(ですか)?」
何人かの声が重なった。
龍生は淡々と答えた。
「あいつ、桃子には常にそんな感じだったから」
「余計なことを言うんじゃない龍生!」
え。
在義が否定しなかった。
この面々は一応ではあるが、咲桜の生みの母親が亡くなっていることは知っている。
『桃子』というのが、母の名であると推察はつく。
「ちなみにわたしも桃ちゃんには在義兄さんみたいな感じだったわ!」
何故か偉そうに言ったのは、夜々子だった。