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「咲桜、二人はいつ式をあげるのです?」

そう訊いてきたのは、箏子だった。

流夜の策謀によって箏子の本心を垣間見てから、咲桜は本人から厳しい態度だった理由を聞かされていた。

咲桜はもう、箏子に畏怖の感情は抱いていない。

ただ本当に、ずっと見守っていてくれたおばあちゃんなのだ。

夜々子が父と結婚した今、籍の上でもそう呼んでいい。

……のだが。

「私たちは、在義父さんと夜々さんのあとです。赤ちゃんも生まれてから少ししてからの方がいいかなって」

「そうなのですか。ではまだ先になりますね。………」

「そうですね」

「……………」

「? 師匠?」

「――いえ、なんでもありません。それよりお前……」

「はい?」

「…………いえ、なんでもありません」

箏子にしては珍しくはっきりしない言い方をして、その日は会話を終えた。



そして流桜子(なおこ)が生まれ、咲桜の切望により、恥ずかしがる在義の背中を押しまくって在義と夜々子の式が挙げられ、咲桜は始終泣いて頼にヘンな顔の写真ばかり撮られて怒って――という経緯を経て、二十歳の咲桜は、結婚式を迎えることになった。

「咲桜、渡すものがあります。うちへ来なさい」

「はい?」

休日で、流夜と色々結婚式の準備を始めようとしていた咲桜に、箏子からいきなりお呼び出しがかかった。

この距離で電話で呼び出すとは一体?

「師匠に呼ばれたんだけど……」

「ん。一緒に行く」

流夜は躊躇いなくそう言い、不思議がる咲桜の手を引いて朝間家を訪れた。

居間に正座した箏子は、その前に咲桜と流夜を座らせた。

「遅くなりましたが、お前に嫁入り道具を調えました」