「ねね、流夜くんってマリッジブルーってなった?」
「ん? どうした、急に」
リビングでのんびりしたまま、咲桜は両手にマグカップを包んで流夜は咲桜を後ろ抱きに包んでいる。いつもの神宮家の光景だ。
「んー、笑満がね、喜びいっぱいなんだけど、少し不安がってるみたいで」
「……咲桜はなったのか?」
「私は楽しみでしかなかった。むしろ流夜くんを逃がさないために早く結婚したかった」
「………ごめん」
未だにこの話では流夜の立場は弱い。
が、流夜はそれを変えようともしない。相変わらず咲桜には怒らない人だ。
「いーよ。もう謝らなくて。今はこうしていてくれるんだから」
咲桜は自分の肩に廻っている流夜の腕に、こてんと頭を載せる。
すると流夜が後ろから咲桜の首元に額を埋めるようにぎゅーっと抱きしめて来た。
「わっ?」
「うん。お前はほんと……」
「な、なに? どうしたの」
「……なんでもない」
「えー?」
「ほんと、なんでもないよ。まあ、結婚の話してたら俺らんときを思い出したけど?」
「う……」
流夜のからかうような言葉に、咲桜は一年前を思い出して真赤になった。
咲桜と流夜が入籍をしたのは再会した――十八歳の――年の五月だが、結婚式をあげたのは、咲桜が二十一歳になる年の六月だった――――………。