「……でも、笑満の大事なことだから、私は笑満の方にいたい」
「咲桜……」
咲桜が真剣に言うと、笑満の声が感動に揺れた。
「笑満ちゃん、そこまでにしてね?」
「お前、大変だなあ」
笑満の何かを止めた遙音に、流夜が感心した声を出した。
笑満は以前、咲桜を王子様扱いしていたのだ。
遙音はそれに妬いて流夜に八つ当たりしたことがある。
笑満と付き合って以来、遙音の最大のライバルは咲桜だった。
笑満と遙音が付き合う前から、咲桜は流夜と恋人関係だったが。
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二人の結婚式では、流夜、降渡、吹雪の三人は遙音の養父である龍生とともに遙音の親族席へ、咲桜は学友たちと笑満の方へ、と決まった、
「また悔しいか?」
夜、寝る前にリビングのソファで隣り合っていると、流夜が言った。
「何が?」
「咲桜、泣いただろ。笑満が遙音と付き合いだしてから」
「? そんなことあっ……………………」
あ。
「…………たね………」
咲桜、消え入りたくなった。
「あの時は結構びっくりしたぞ? 最初に付き合うって話を聞いたときはすごい喜んでたから、どうしてこんな落差があんのか、って」
「あははははは」
もう明後日の方を向いて乾いた笑いしか出ない咲桜だ。
笑満が長年の片想いを実らせて遙音の彼女になったとき、最初にそれを知ったときはすごく嬉しかったのだ。
だが、そのあとに来たのは淋しさだった。
ずっと一番の友達だった笑満が、咲桜の『すぐ傍』にいないのが現実だと知らされて。
その前に咲桜は流夜と恋人だったので、先に笑満の『すぐ傍』からいなくなったのは咲桜だ。
なんでこんな感情を抱くのか不思議だった。
でも、正直に淋しかった。
流夜は、意味不明なことを騒ぐ咲桜に愛想もつかさず受け止めてくれた。
現実を受け入れた先では、流夜をもっと好きになっただけだった。