「こいつの自己評価の低さはどうにかなんねえのか……」
「諦めろ、遙音。りゅうだし」
降渡は最早、投げやりを通り越して生真面目に進言してやった。
「あのさ、ちなみになんだけど、式には斎月(いつき)ちゃんとか主咲(つかさ)って来たりすんの?」
降渡のふっとした質問に、刹那、空気が凍った。
「いや、神宮たちの式ならまだしも、俺も笑満ちゃんもそう接点ないぞ? それに、『大和斎月(やまと いつき)』ならともかく『司斎月(つかさ いつき)』が出てくんのはまずいだろ」
「まー、そうかー」
降渡自身、何とはなしに言ったことのようで、それ以上は突っ込まなかった。
話に加わらぬ一角で、咲桜はドキドキ高鳴る心臓を気づかれないように押さえていたりした。
(び、びっくりした……降渡さん、なんてこと訊くの……)
「斎月ちゃんかあ。元気してる?」
咲桜の隣の笑満は机に頬杖をついて懐かしそうな顔をしている。
咲桜は平静を取り繕う。
「うん、元気だよ。相変わらず」
そっか。と、笑満もそれ以上は訊いてこなかった。
大和斎月――犯罪学者にして流夜の弟。
斎月は現在、表立って動いていない。
それ相応の理由が出来てしまったからだ。
「笑満の苗字も変わるんだねえ。……『猫柳笑満』? 可愛いなあ」
「うっ」
咲桜に茶化されて、笑満は顔を真赤にさせた。
この逆のことが、四年前――高校卒業直後の咲桜と笑満との間でやり取りされていたりする。