「来たよー。遅れた、悪い」
「いや、今日はありがとな」
流夜の言葉とほぼ同時に入って来た降渡に、遙音が応じる。
「いや。結婚のことだろう?」
「あー、何かと言うか、……頼みがあるんだ。三人に」
遙音は神妙な顔をして、笑満を呼んだ。
笑満が遙音の隣に座り、咲桜も流夜の隣についた。
「えーっと、……三人に、式で俺の親族席にいてもらえないかと、頼みたかったんだ」
「「……は?」」
流夜と吹雪は間の抜けた声を出した。
降渡は承知していたのか、顔色を変えない。
「俺の家族ってもういないし、事件以来付き合いのある親戚もないから、ほんとーに誰もいねえんだ。だから……お前らと、もちろん親父にも、いてもらえたらって思ってる」
「思ってるって――笑満ちゃんのご家族はいいの? それで」
「はい。うちはその辺りは承知してるので、もし相手が快い返事をくださるならそれで構わないって言われました」
「別に僕らはいいけど……いいの? 正式な親族じゃないのがいて」
さすがに吹雪も一度には引き受けられないようだ。
「俺を育ててくれたのってお前らじゃん。だから頼みたいんだけど――神宮はほら、俺の友達とか笑満ちゃんの友達とか、藤城時代の生徒がいるからさ。どうかなーって」
「別に構わない。俺なんて憶えてないだろうし」
『………』
降渡と吹雪は何も言わないでおいた。
「ド派手な退場かましたのは誰だよ、神宮。忘れろって方が無理だ」
流夜は、任期途中で警察に関わっていることと素の顔がばれている。
その際、吹雪と降渡も学校に来ている。
更に、咲桜の卒業式、公衆の面前でキスしてさらった犯人だ。
咲桜の方から友人たちへの説明がされているとはいえ、忘れられるわけがない。