(いや、なんかこれ重すぎないか? バレンタインには一度あげてるのになんで? って思われない? ……やっぱバレンタインとかぶせて渡すのはやめておこう……)

急に気合いがしぼんでしまったが、そのことばかりに囚われているのももったいない。

今、流夜は『隣にいることが出来る人』、になったのだ。

降渡から聞いた話なのだが、流夜は『仕事中』は一人になりたがる、と。

現在進行形の現場も真っ只中ならその中に立つほかないが、それ以外――過去の事件を洗い直しているときや、海外と機関とやり取りをするときは、一人で仕事をしていたそうだ。

でも咲桜は、そういう流夜のすぐ傍にいた。

高校一年生の頃、咲桜は流夜宅のアパートを何回も訪れている。

仕事をしている流夜は、咲桜が傍にいることをゆるしてくれた。

たまに、「休憩~」と言って咲桜を抱き枕代わりにしていたことさえある。

それは今も変わらない。

仕事中の流夜の傍にいられる。それは咲桜だけの特権だ。

今日は一日、華取の家にいたので――自分の荷物整理だけでなく、華取家の分の買い出しなんかもやっていた――、自分の仕事の方もやらないといけない。

何しろ法律は日々変わる。

勉強道具一式はこちらへ持ってきているので、流夜が帰ってくるまではそれをやっていようと決めた。

零時になる前に、流夜は帰って来た。

「おかえりなさいっ」

「ただいま」

出迎える咲桜に、まず抱き付く流夜。

「ご飯出来てるよ」

「うん」

「寝る前に少しは食べてね? って言うかもう眠そう……」

「少し気疲れした」

咲桜は、流夜の背中に手を廻した。

流夜の仕事の、メンタルへ負担、神経の使いようは並ではないだろう。

――それを承知で、咲桜はその世界に立つことを決めた。

眠そうな流夜をリビングまでつれてきて、ソファに座らせる。

まず手洗いとか、楽な格好に着替えもしてほしいけど、こういう疲れているときの流夜は、抱き付かせておくのが一番回復してくれる。

なので、気が済むまで抱き寄せられたままでいるのがいい。