「なんで誕生日にあんたとデートなのよ」
「僕が連れ出さないと、マナちゃん仕事に埋もれて何もせずに自動的にトシとっちゃうでしょ」
「……あんた本当毒舌よねー。あたしによく似すぎだわ。お兄ちゃんにあたしが怒られるんだから、性格変えなさいよ」
「僕のベースがマナちゃんなんだから仕方ないでしょ」
僕が言い返すと、マナちゃんは苦い顔で睨んで来た。
「で? どっか行くの? あたしに有給なんて取らせて」
「うん。行こっか」
僕が手を差し出すと、当然のように叩かれて終わった。
……マナちゃんと手を繋げたのは、僕だけだったのになー。
マナちゃんと来たのは、水族館。
仕事しかしていないマナちゃんだ。少しは自然に触れた方がいいと思う。
大きな水槽の前で、マナちゃんじーっと上の方を見ている。
「こういうところに来るとさ……」
「うん?」
マナちゃんがぽつりと言ったから、僕は視線をマナちゃんに向けた。
「土左衛門って本当に気の毒よね……」
「………」
ここにも事件頭がいた。
本当に年中仕事のことしか考えてないんだな。
ちなみにドザエモンって、水死体のことだから。
「担当する方も大変だよねえ」
僕はそんな言葉で応じる。
事故にしろ事件にしろ、水死体はその状態が凄まじいからね。
「吹雪、ケーキ食べたい」
「……今の会話から食いものの話になっていいの?」
正直、警察官だって苦手な人が多いものだよ。吐いちゃうよ。神経図太いなあ。
けど、そんなとこも承知な僕だ。