ずっと待たせてしまった幼馴染。

夜々ちゃんが十六歳――桃と結婚する前にかけた勝負は、俺の負けが決まった。

『わたしが在義兄さんをすきなのは、ずっと変わらない。でも在義兄さんにだけ好きをあげるっていうのは悔しいから、桃ちゃんのことも大すきになる。お腹の子どものことも。見てなさい。桃ちゃんも赤ちゃんも、在義兄さんよりわたしのこと大すきにさせてやるわ! 勝負よ! 在義兄さんより、桃ちゃんのことも赤ちゃんのことも、わたしのが愛してるんだから!』

……咲桜が女好きだという衝撃の話を婿(予定)から聞かされたけど、それって絶対原因夜々ちゃんだろ。

娘に悪影響与えないでくれよ……。

本当に咲桜は夜々ちゃん大すきになってしまったんだから。

そんな戯言みたいな関係で長くきたけど、咲桜の卒業を一つの区切りとして認識していると気づいた頃から、俺は負けていた。

夜々ちゃんに、ではなくて、華取のしがらみに。

兄の遺した呪いの願いに。

はい。降参するしかない。

ずっと、すきだったよ。夜々ちゃん。これからは、愛していいだろうか。

咲桜は夜々ちゃんを大すきだから、負けを認める。

生まれてくる二人目の娘の一番にも、俺はなれないだろう。

……咲桜が俺を遙かに凌駕するほどすでに愛しまくっているから。

二人目の娘まで女好きになったらどうしようという悩みがあるくらいだ。

「どんだけカオスなんだ? お前の家族は」

龍生に呆れられた。反論のしようがない。

生家の華取も、育った華取も、俺が望んだ家族の華取も。

……まあ、それが俺ということで。

兄さん。願いに応えられなくてごめん。

血は繋がっていく。俺が望んでしまったから。

でも、『呪術家・華取』は終わらせるよ。

それだけは、約定しよう。

だって、今の俺の家族を見てくれ。

どこにでもいる、普通の家族だろう?