たぶん、そろそろ知られているだろう。

流夜くんとか、吹雪くんとか。

龍生には自分から話した。愛子は知らない。

……私の両親は、同父同母の兄妹だった。

太古、一夫多妻だった日本では、異母きょうだい間での婚姻が認められていた時期はあるようだ。

けれど、古事記や日本書紀にあるように、同母きょうだいの婚姻は禁忌だった。

軽太子(かるのたいし)と軽大郎女(かるのおおいらつめ)が、同母兄妹でありながら恋をしてそれが明るみとなった。

日継ぎの御子――皇太子であった軽太子は廃太子とされ、命を追われる身となり、妹とともに自決する。

……兄妹の恋愛物語が死で終わるものが多いのは、日本で最初の兄妹恋愛物語の終末を本能的にでも知っているのだろうか。

なんて考えたことも、確かあったと思う。

父は華取家当主。母は、そのすぐ下の妹。

父には妻がいて、子どもも二人いた。

嫡男の方が跡継ぎだった。

妹である俺の母は、結婚はせずに俺を産んだ。

そして、父は――事実上の伯父は、俺を跡継ぎにすると宣言したそうだ。

そんなことをすれば、そりゃ疑われる。

余程の間抜けでなければ、その意味を誤解などしてくれないさ。

俺の両親は、やはりただの馬鹿だったのだろうな。

母が、父親が誰かを言わなくても、憶測が流れ噂は立つ。

しかも、本家の跡取りだ。

基本は直系でつながれていくものだった。

まあ、俺も物心がつくどころか、乳飲み子の頃に母から――華取本家から離されたから、華取の家がどんなものだったのかは知らない。

兄の遺書が一枚あるだけだ。

一族に、家に火を放って焼き尽くした腹違いの兄。

俺に当てられたものだと、養子に出された先の両親から譲り受けた。

そこにあったのは、兄が華取を殺した理由。

なんでも、俺のことが疎かったとか、跡取りになりたかったから、とかではないらしい。

むしろ、華取を壊すことが兄の命の理由だった。

俺に、「華取を終わらせろ」という言葉だけを遺して逝った。