「……すきでいる、だけなのか?」
「当り前。現実で叔母と甥なんだから、それ以上に何があるの」
「……お前はそれでいいのか?」
「よかなかったら同じ職業ついてないし。マナちゃんはずっとすきな人いるし」
「春芽さんに? 春芽が負けるような相手なのか?」
「……お前は馬鹿だな。お前のお父さん。龍さんだよ」
「………ええっ⁉ お、親父のこと、なのか……⁉」
「ちょ、咲桜知ってたの⁉」
ついに笑満まで参戦してきた。
咲桜は曖昧に肯く。
「一応。聞いたわけじゃないけど、龍生さんもマナさんも、うちによく来てて、それを見てたらなんとなく」
と言うか、愛子は言葉にこそしないが、常に龍生に「すきすきすきー!」という態度全開でまとわりついていたから。
「まじで……? じゃあ親父と春芽さんが結婚する可能性もあんの……?」
「……あったら楽しいね」
「どこがだよ!」
うっそりと微笑んだ吹雪に、遙音が噛み付いた。
ふゆちゃん……泥沼を自分から作るんだからなあ。
けれど実際咲桜も、龍生と愛子が結ばれる、という想像はしたことはなかった。
……想像の限界値だったのだろうか。
「――って、まさか春芽さんと親父が結婚したら、春芽さんが俺の母親……?」
「あ、なら先輩と私が兄妹ですね。マナさんも私のお母さんだから」
「そ、それであたしが遙音くんと結婚したら、あたしと咲桜も姉妹になれるのかなっ?」
「想像力逞し過ぎるなあ。若人め」
一か所も血縁関係のない家族が出来つつあった。
「あー、なんてゆーかさ。すごいね、お前たちは」
「? なにが?」
吹雪はしみじみ言うものだから、咲桜は瞬いて見返した。
「……いや。なんでも」
誤魔化された。
なんだか哀愁が見えて、咲桜は、それ以上は訊かなかった。
一月後のホワイトデーには、吹雪からお返しを二つもらった。
一つは飾った。食べられるわけないよ! 吹雪にそう言うと、いきなり吹き出された。
お前たち似過ぎてるよ、と。