「気にするな。……泣くほど淋しい思いさせたのは俺だ。収まるまでこうしていていいか?」
咲桜の心を大事にしてくれる。だから傍にいて、安心する。居心地がいい。
「……お願いします」
「ん」
髪を撫でられて、咲桜の中に安堵感は強くなる。
……ずっと、こうして――
「在義さん、式には?」
「今日もお仕事。大丈夫だよ? 夜々さんいてくれるし、いつもこうだし」
あ、でも、と咲桜は思い出したように顔をあげた。
「今日は七時には帰るから、友達といても帰って来なさいって言われてる。今は……」
「まだ三時だな。でも珍しいな。在義さんが時間指定してくるって」
デフォルトで多忙な人なのだ。
「だからそれまでには帰らなきゃで……えと……」
「俺もいてもいいか?」
「勿論! て言うかむしろ流夜くんがいてくれないと話が進まないと言うか!」
勢い込む咲桜に、また苦笑がもれる。
「今日言いたいと思う。在義さんに。……咲桜と結婚させてください、て」
「う……うん」
トクンと鳴る心臓。
「……ゆるしてもらえるかな?」
「もらえるよ。在義父さんが言ってたんだよ? 婿は流夜くんで、て。反対されたら折れるまで口きかない」
「―――」
それは在義にはこたえるだろう。娘溺愛な人だから。
「じゃあ、がんばって俺が説得しないとな。咲桜に無視されたら、在義さん泣きそうだ」
「がんばってください。私もがんばるから」
「ああ」
咲桜が流夜の胸に額を寄せて、流夜の手が咲桜の髪を撫でる。
「……流夜くん、今までどんなことしてたの?」