「……は?」
「いやー、ほらあいつ誰より事件頭だからさー。起源になった牧師の撲殺や、マフィア抗争のブラッディバレンタインは知ってるだろうけど、このチョコを渡されて意味を理解するかは、謎」
「…………」
らしすぎる。
「て、え? 学生時代とかもらわなかったの? ふゆちゃんと降渡さんは知ってるんだよね?」
「学生時代は、女子は丸無視だったからねえ。さすがに僕らは知ってるよ。降渡は絆ちゃんいたし、僕は隙あらばマナちゃんからもらおうとしていたし」
「………」
三者三様すぎる。
「……ずっと、マナさん、すきなの?」
「はあっ⁉」
大声を出したのは遙音だった。
咲桜がびっくりして顔をあげると、遙音がカウンターの中で顔を引きつらせていた。
あ、もしかして知らなかった? 咲桜の言葉にびっくりしたんだろう。
「先輩?」
「ちょ、ちょっと待て春芽!」
「なに。待てって言われても、別に話進めてないだろ」
「ええと……すきって、言っても、優秀? な先輩刑事として慕ってる、みたいな?」
「お前は馬鹿なの?」
「あ、やっぱそういう――
「恋愛感情ですきに決まってるじゃん」
「バカはてめえだろ!」
「うるさいなあ」
必死に逃げ道を探す遙音に、吹雪はわざとらしく耳をふさぐ。
「いや、だって、春芽さんってお前の叔母さんだろ?」
「だから?」
「え……なんかそう真顔で返されると……り、倫理的に? とか? 道徳的にとか……?」
「そんなもん食っても生きていけないじゃん。すきでいるくらいいいだろ」