笑満も、遙音も、吹雪も黙っている。

咲桜は、頼に向き直った。

「ありがとう。好いてくれるのは、嬉しい。けど……私にはすきな人がいるから、頼と恋人になることは、出来ない。ごめん」

「……この先、逢えるかわからない人でも?」

「うん。逢えるかわからないから、逢いに行くんだ。私の神経は、今そちらにしか向かっていない」

「……そっか」

頼は落ち着いた顔で、淋しそうに笑った。

「それで……頼? こんな返事をしてしまっては……私は……頼の友達失格だろうか……?」

「何言ってんの?」

頼はあっさり答えた。

「失格に決まってんじゃん。人のこと振っておいて」

「うう……」

そこまでバッサリ……咲桜が視線を落とすと、吹雪がくすりと笑った。

「可愛いねえ、お前たちは」

「……ふゆちゃん」

それを茶化しと受け取った咲桜が恨みがましい目で見ると、吹雪は頼の襟元を摑んで引き寄せた。

そして小声で問いかける。

「流夜に負けたから、咲桜の傍にはいたくないんだ?」

「………」

渋面になった頼を、咲桜は眉根を寄せて見る。何言われたんだ?

「ま。頼がいなくなるのは、僕は別にどうでもいいけどね? そしたら咲桜の親友が僕と笑満ちゃんだけになるだけだし。僕が咲桜に占める割合が大きくなるだけ」

そこで、ぱっと手を放した。

「悔しいんなら、どっかの放浪中を負かせればいいじゃないか」

終始ニコニコしている吹雪。

吹雪が意識的に音量を潜めたせいで咲桜は、そのどの言葉も聞こえなかった。

「……咲桜」

頼が、ものすごく不満そうな声で呼びかけた。