お隣のインターホンを押すと出て来たのは緊張した面持ちの夜々子で、咲桜は取りあえずぎゅーっと抱き付いた。いつにも増して可愛い!
箏子の分も渡してから、笑満と頼と約束している《白》へ向かう。
今ではすっかり、三人が集まる場所でもある。
遙音は現在、龍生の許で暮らしていて、跡取り修行中だ。
「こんにちはー」
カウベルを鳴らすと、笑満と遙音の応答があった。
在義の娘と、龍生の息子とその彼女、として、咲桜や笑満の存在も、店では認められて来た。
一人問題があるとすれば……。
「頼! 隠し撮りするな!」
遙音に怒られているもう一人の幼馴染、だろうか。
頼は、流夜以来やたらな行動力を示していないが、相変わらず写真がすきだ。
だが、あまり自分たちの証拠を残したくない人ばかりが利用している店なわけで。
ノリのいい人以外からは、白い目で見られている。
気にする頼ではない。
「咲桜、あたしから」
笑満がカウンターの中から出て来て、可愛い包みを渡してくれた。
「ありがとう。私からもね」
笑満はほんわか微笑んでくれる。
あー、癒されるー。
「咲桜、僕には?」
笑満と友チョコの交換をしていると、先に店にいた吹雪が呼んで来た。
「ふゆちゃんのもあるよー。甘いの大丈夫?」
「勿論」
「私、お菓子は苦手だから笑満のほど美味しくないからね?」
「そうなの? 咲桜から、ってとこに価値があるんじゃん。流夜より先にもらったって、一生流夜に自慢してやろ」
「……流夜くんに渡せてないの、知ってるんだね?」
咲桜の瞳が、またじと目になった。
吹雪はからっと笑う。
「咲桜に逢いたくてしょうがないバカなら知ってるよ」
「………」
むー。
「そんなんならなんでいなくなるんだよ……」