チョコを作ってみました。

「………」

はあ、とため息が出る咲桜だった。

去年は色々とあってバレンタインなんて余裕はなかった。

今年は渡した人がいても、どこにいるかわからない。

「え、父さんに渡すの嫌だった?」

咲桜からチョコをもらった在義がびくついた。

娘の落ち込んだ様子に。

「……父さんは流夜くんに逢えてるんでしょ?」

睨まれた。

在義は逃げ口を探すが、こと、この件では在義は強い立場ではない。

「……仕事関係だけだよ?」

じと。

「………ごめん」

「うー、すきな人には逢えないし……もう斎月に浮気してやろうかなー」

「! そ、それだけはやめなさい咲桜」

斎月の名前を出したのはただの流夜への嫌がらせなのだけど、在義が異様にびくついた。

うん? どうした。……なんだか本当に顔色悪いな。

「いや、父さん? 別に私は女の人がすきというわけじゃないよ?」

流夜に、女好きとか評されていることは知っている。

別に可愛いもんを可愛いと言って何がわるいか。すきなのは一人だけだし。

「そういうわけじゃなくて……斎月くんのことをそんな風に言って生きているのは咲桜ぐらいのもんだよ……」

なんかぼそぼそ呟いている。

「ああ、主咲くんが怒るとかそういう心配?」

「いや……怒るのは主咲くんというか、その周りというか……」

まだごちゃごちゃ言っている。

ほんとどうしたかね。

「今日休みだから、チョコ渡しに笑満とか頼に逢ってくるね。この後夜々さん来るって言うから、それだけは迎えてあげてねー」

「夜々ちゃん? 咲桜に逢いにじゃないのか?」

「……今日は何の日ですか?」

咲桜が返すと、在義はバツが悪そうな顔をした。

さーて、私は出がけに夜々さんと箏子師匠にはチョコを渡して行こー。