咲桜の顎に指をかけて上向かせ、軽く口づけた。

「!」

「これも駄目?」

「えと……いいです……」

負けたのは、咲桜だった。

流夜は、今度は暴れない咲桜を抱きしめた。

「ありがとう」

「……すみませんでした」

「気にするな。本音聞けてよかったよ」

咲桜が悩んでいるのなら、それを解決出来て良かった。

咲桜が傍にいるだけで幸せな自分だから。

「あ、あのね? 昨日夜々さんに聞いたんだけど」

「うん?」

「あ、赤ちゃんの名前」

「ああ。女の子ってわかってるんだもんな」

「私、嬉しくなっちゃって」

「なんて言うんだ?」

「あのね――――」



元気よく泣いている赤子を抱いた夜々子は、枕元の在義に頭を撫でられて、幸福そうな顔をしている。

病室に入って三人のその姿を見た咲桜は、それだけで泣き崩れてしまった。

流夜に支えられて、夜々子の傍まで歩く。

「咲桜ちゃん、流夜さん。あなたたちの妹よ」

気だるさを持った夜々子の声に、咲桜は泣いてしまいそうな口元を押さえて、何度も肯いた。

「二人から一文字ずつもらって、『流桜子(なおこ)』よ」