「何でもないことなわけないが……咲桜が嫌なら当分なんもしないから、安心して帰って来い」

「え……いいの? そんな簡単に肯いちゃって……えと、夫婦? なら普通のこと、なんでしょう?」

今度は自分の言い方に照れて顔を紅くして、「うあ~」と流夜の胸に顔を伏せた。

「他所の夫婦は知らんが、俺と咲桜の問題だろう。だから二人で決めればいいだろ。……俺は、ただ咲桜と一緒にいる確約が欲しくて結婚申し込んだわけだし。あまり望み過ぎるなってことかな」

「りゅ、流夜くんの望みは私が叶えてあげたいって思ってる!」

顔をあげた咲桜は、瞳まで真赤だった。

「あ……私の、出来る範囲で、ですが……」

流夜の行動範囲の滅茶苦茶な広さを思い出したらしく、そう付け足した。

流夜は思わず吹き出してしまった。

咲桜が必死過ぎて可愛い。

「もう十分叶えてもらってる。今度は俺が叶えたいよ」

「私も叶えてもらってるよ? 流夜くんと一緒にいたいって……」

「じゃあ、帰って来てくれるか?」

「……はい」

咲桜は、恥ずかしそうにこっくり肯いた。

「あと――」