昼食をとるために、宝飾店を出てカフェに入った。
「あの、ほんとにいいの?」
「咲桜がいやじゃなければ。在義さんや朝間先生が隣ってのは、やっぱり俺も安心だしな」
咲桜が困ったように見上げるが、流夜は柔らかい表情で返してくる。
流夜が、「実は在義さんには話してある」と言って切り出したのは、二人の新居のことだった。
華取の家があるのは都会とも田舎とも言い難いところで、混み合った住宅街でもない。片田舎、というのだろうか。
華取の隣の家は空き家になっていて、流夜がそこを考えているというのだ。
前の住人とは、咲桜も面識はある。
仲の良い子供が二人いる家族四人家族で、海外転勤のため離れたのだ。
引っ越しの折には挨拶もしていた。
奥方が「よい人が住んでくれるといいのだけど」と言っていたっけ。
まさかそこに自分たちが収まろうとは。
「わ、私はもちろん嬉しいんだけど……」
「じゃ、決まりな。不動産屋の方とは前に連絡してあるから――」
「あ、あの! でも!」
「うん?」
「その、おうちってすごいお高い、買い物? だよ? そんなすぐ決めちゃっていいの?」
「すぐじゃない」
流夜の瞼が一度閉じられた。
「ずっと、考えていたことだ。咲桜と一緒にいるためのこと」
「―――」
やっぱり、なんでいつも流夜には負けてばかりだ。
「あ、ありがとございます……」
「うん」
「あ、と……そうだ! 夜々さんと父さんが結婚するんだから、夜々さんが流夜くんのお母さんになるんだよね?」
「え………」
それまで超爽やかでカッコよかったのに、流夜の表情が一気に翳った。