「いらっしゃいませ。初めまして」
「は、初めまして! よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願い致します。私、高千穂と申します」
高千穂は綺麗な動作で頭を下げた
「取りあえず、店内見せてもらうか?」
「あ、うん。でも私、こういうの全然わからなくて……」
宝飾品には興味なく来たので、持っているアクセサリーも流夜からもらったものだけだ。
「気に入っていただけたものでよろしいのですよ。結婚指輪はこちらにございますので、どうぞご覧ください」
高千穂にショーケースの一角に招かれた。
「……あ、あまりにキラキラしくて気圧されそうです……」
「大丈夫ですよ。実は一つ、おすすめしたいものがあるんです」
「ほんとですか?」
サンプルでもあるのだったら嬉しい。
本当に眩しすぎて全然わからなかったから。
そっと、高千穂が声をひそめてきた。
「実はそちらの指輪、結婚指輪と対になった婚約指輪なんです」
「え……対、って?」
「婚約指輪は女性だけですが、婚約指輪と結婚指輪、重ね付けをあらかじめ考えたデザインのものなんです。旦那様、即決されたんです」
「――――」
最初っから、結婚指輪のことまで考えて?
……そんな素振りをちっとも見せないところは、器用なんだか不器用なんだか。
「ちょ、ちょっと待っててもらっていいですか?」
咲桜を「ゆっくり見ておいで」と送り出した流夜の腕を摑む。
「ん? どうした?」
「あの……ありがとう」
「気に入ったの、あったか?」
こくりと肯いた。
そして、自分の左手を指す。
「……これ」
その意味がわかったのか、流夜は一瞬驚いたように瞳を見開いたあと、「よかった」と微笑んだ。