「――で。ここへ来たかったわけだ」

車が停まったのは、小さな外観のお店だった。

「なんのお店?」

「ん。必要かなーと思って」

「なにが?」

「見てみればわかる」

何か楽しんでいるような眼差しで言われ、咲桜は表に廻って硝子の中を覗き込んだ。

「え―――」

「これ、買ったとことなんだよ」

と、流夜が咲桜の左手を取った。

それを聞いた咲桜、また真赤になる。

うう……顔が常に発熱している。

「要るだろう? 結婚指輪」

「あ……はい」

なにを考えるでもなく肯いてしまった。結婚、ゆびわ?

現実が咲桜に近づいてくる。

流夜に手を引かれて、小さなお店に入る。

「いらっしゃいませ」

丁寧に頭を下げたスーツ姿の細身の男性が、流夜を見て微笑んだ。

「お久しぶりでございます」

「お世話になります」

流夜が挨拶したので、咲桜も慌てて頭を下げた。

もしかして、以前に流夜が来たことを憶えている?

「三年ぶりでございましょうか」

「ええ。無事、また来ることが出来ました」

「と言うことは、今回は……」

「はい。今度は彼女に選んでもらおうと思いまして」

促されて、咲桜は一歩前に出た。

男性は柔らかい笑みを見せる。