「流夜くんはいいの?」

「いいよ。咲桜の方は変わることもあるだろうから、桜台さんには先に俺の方から連絡しておく」

「あ、涼花さんとも知り合いなんだっけ」

「一応な」

桜台涼花。絆の先輩で、桜台法律事務所の所長だ。

「あ」

「どうした?」

いきなり咲桜が変な声をあげた。

「忘れてた……」

「何をだ? 忘れ物?」

「じゃなくて……私の、その……彼氏が流夜くんだって、絆先輩に言うタイミング逃したままだった……」

「ああ。あいつはそういう道徳っぽいこと、五月蠅いからなあ」

「ちゃ、ちゃんと話すね。これは私が言うことだから」

「わかった。頑張れ」

頑張らなくていいと言った流夜も、今はこうして背中を押してくれる。

時間が停まったままではないことを感じる。

「じゃ、五月二十日な。それまでは恋人で同棲。いいか?」

「う、うんっ」

遠かった夢が、今はこの掌。

頑張って、よかった。

『流夜くん』と出逢った日。

大切な日を、また一つ重ねよう。