「前から物わかりのいい方だったけど……そこまでわかってくれてたのか?」

「……夜々さんに言われました。私が荒れているのを見かねて」

「………」

咲桜が荒れた理由を在義に問い詰められてシメられた流夜なので何も言えない。

実のとこ、在義とは逢っていた。

話すことは先送りにした、神宮家の事件のことでも。

「戸籍上は縁がなくても、本当に美流子さんと姉弟じゃなくても、私と流夜くんの間にあったもの、受け容れるためとか、拒絶するためとか、そういうのを流夜くんに寄りかかって昇華しちゃダメなんだって。……一人で対決して、どうするか決めないと、て」

「………ああ」

必要な二年だった。

「……なににやけてんですか」

「ん? 久しぶりの咲桜が嬉しいなーと」

「………、っ」

「なあ、よく見せて?」

両頬を手で包み込むようにして上向かせられた。

二年前と変わらない距離と眼差し。ずっと、ここにいたかった。

「んっ」

咲桜の指先が流夜の袖を握る。

拙い応え方しかできない。触れれば戻れないことなんて、容易にわかるだろうが――

キスが止まなくなる。

ずっとほしかった。

ずっとこうしてほしかった。

ずっと腕の中に置きたい。

ずっと抱きしめていてほしい。

ずっと―――

いつの間にか咲桜の背中がソファの座面についている。――と、何故か流夜から仰天したような声があがった。

「咲桜⁉ どうした⁉ ――じゃない! ごめん! その……泣くほど嫌だったら、そう言っていいから。怒らないから……」

「え?」

涙をぼろぼろ流す咲桜からは気の抜けた声。