思い出しても咲桜は言葉をなくす。
斎月は何と言うか……摑みどころがなさすぎる。
地に足ついているんだかいないんだか。
『なんてゆうか……よくそんな人と兄弟名乗ったり相棒とか言ったりするね……』
こっちも神経図太いのか。斎月はさらっと答えた。
『遠い日の因縁?』
『百パー悪い方向じゃん。斎月、流夜くんに騙されてない? 主咲くんがいるんだから早めにまともな方向戻りなよ?』
『先に騙したのは私だから、私の騙しのが勝ち越してる』
勝ち誇った顔をされた。
『本当妬き甲斐がないね……』
彼氏――だった人――が一等の位置に置いている、しかも女の子なのだから、本来ならもっと嫉妬の対象になるんじゃないかと思う。
けどこの子ときたら……レベルかステージかが違い過ぎて、諦めの瞳しか出てこない。
『騙してた、って、本当は女の子でしたーってやつ?』
『一つはね。もう一つは、私も父さんとは血が繋がっていないってこと』
『……え?』
『咲桜姉様とは状況は違うんだけどね。私の――大和の父親は、育ての親ってことになるのかな。大和の父との結婚のあとに私が生まれてるから、戸籍上はそっちで、血縁上は、母の前の恋人なんだ』
『え……そう、なの?』
『うん。あ、親に訊いたわけじゃないから、たぶん二人とも私が知ってるって知らないんだ。内緒ね?』
『あ、うん……。……でも、どうして知ったの?』
『えーとね、二つの頃に弟が生まれたのがきっかけで遺伝子組織に興味持って、家族の調べたんだ。したら私と父さんに親子関係証明出来なかった。んで、色々と探って母さんの元カレに行き当たって、そっちで合致した。元カレってのがちょっと普通ではない家柄でね。たぶんこのまま、娘であることは名乗り出ない方がいいんだ。……あ、引いてる?』
『いえ、引いてはないけど……すごい行動力してるね。さすが流夜くんの弟』
『最高の褒め言葉だ』
ニッと、斎月は不敵に笑った。