「そうか? 俺が気にするのは咲桜の評価だけだから、まあ、よろしく?」

また、ぽんと頭に手が置かれた。

「私の評価って……あ、なら一つ言いたいことある」

「ん?」

「いくら弟扱いだからってあんまり斎月のこと、殴ったり引っ叩いたり拳骨食らわせたりぶっ飛ばしたりしちゃダメだよ? 造りは女の子なんだから」

「………」

一気に流夜の顔色が悪くなった。

「……咲桜」

「はい?」

「いつ、あのバカとそんな話になったんだ?」

「んー? 斎月が日本に来てたときに逢いに来てくれて、そんで流夜くんの表情の話になったんだよ」

「表情?」

「うん。私は笑ったり怒ったりしてるのよく見てたからみんなの言ってることがよくわからなかったんだよ。『無表情以外見たことない』って言われてるんでしょ?」

「……それか」

何かを観念した様子の流夜。咲桜は続ける。

「そのことを斎月に訊いたら言ってたんだよ」

『流夜兄さん? うーん? 私が顔合わせたら、怒られるか怒鳴られるか殴られるか引っ叩かれるか拳骨かぶっ飛ばされるか鉄拳制裁か説教、かなあ』

それを聞いた咲桜、蒼ざめた。

『ちょ、ちょっと待って斎月。なんでそんな九割バイオレンスなの』

『驚いた? だいじょーぶ。九割は説教だから』

『残りの一割は全部バイオレンスか! ちっとも大丈夫違うよ!』

『だいじょーぶだよ。私怪我したことないし』

『欠片も大丈夫じゃない話だよ! 斎月は女の子なんだよ?』

『弟扱い、で、元男育ちだからいんだよ』

『そういう問題じゃないと思うよ……。兄弟の感覚でもさ、もうちょっと優しくしてほしいとか思わないの?』

『え、流夜兄さんに? 考えるわけないよ。そういうの考えるのは咲桜姉様の位置だろ? 私に優しいのは主咲くんだけで十分』

……斎月が総てを納得し過ぎていて、訂正の余地がなかった。