「ああ。やっと学校終わったから、所長とみんなに、結婚の報告に来た」
「室長が結婚⁉」
今度は背後から声が飛んできて、咲桜はびくりと肩を跳ねさせた。
見ると、ファイル抱えた眼鏡の女性が目を見開いている。
「おはよう。そういうわけだ」
「ど、どうしてですか⁉ 室長恋人いないって言ってましたよね⁉」
大声で叫ばれて、何事かと所員たちが顔を見せ出した。
「あまり訊かれたからそう答えただけだ。もう婚約者だったからな」
流夜が平然と返すと、最後に顔を見せた若い男性の所員が「へー」と明るい声を出した。
「大学卒業で即結婚ですかー。羨ましいですねー」
大学? 咲桜は首を傾げた。が、ああと気づく。
そっと挙手した。
自分の容姿で実年齢に見られたことはない。
「すみません、卒業したのは高校です」
「そつ、……え?」
「十八、です。歳は」
『…………』
一同は沈黙した。
そして、好奇、驚き、色んな眼差しが七人の所員から流夜に向けられた。
『犯罪ですよ室長!』
「犯罪じゃねえよ」
若干イラッとした流夜の声。
咲桜は申し訳なくなる。