「今日も休み。……ああそうだ。一度、咲桜には犯研に来てほしいんだけど、今から先にいいか?」
「えっ」
「紹介しておきたいし。咲桜が犯研まで来ることもあるかもしれないしさ」
「そうだよね。じゃあ……私の方も、都合つくとき、いい? 所長や絆先輩に」
「咲桜の方は名前変わったりするからな。桜台所長に話して、そちらのいい時間を聞いておいてくれ。合わせるから」
「大丈夫? すごく忙しいんでしょ?」
「忙しくなるのは咲桜も一緒。そりゃ、時期的なものはあるけど、桜台さんならそういうとこ、話通じるだろ?」
実は、桜台法律事務所の所長こと桜台涼花と流夜は顔見知りらしい。
同じ領分に足のある仕事だ。
咲桜は肯いた。
「そうだな……今、所内は忙しいところでもないから、先に犯研へ寄って行ってもいいか? 向かうところへの途中でもあるから、挨拶だけ」
「う、うん」
き、緊張してきたー! いきなり心臓がドクドク言い出した。
それを察してか、流夜がくしゃりと頭を撫でてくれた。
+
犯研――犯罪学研究所。
来るのは二度目だ。
建物入って、すぐに所員に出くわした。
朗らかにこちらを見て「室長」と呼んで来た。
「おはようございます、室長。珍しいですね、室長が有給取るなんて」
「おはよう。大事な用だったからな。仕事は大丈夫か?」
「大分大丈夫じゃないです。室長が日頃他人の何倍働いてるか身に沁みました。ごめんなさい」
頭を下げられた。
「それは悪かったな。でもどうしても外せなくて――彼女の卒業式だったんだ」
彼女。
誰に躊躇うでもなく、もうそう言えるのだ。
顔をあげた所員と視線がかち合って、咲桜は頭を下げた。
「はじめまして、華取咲桜といいます。流夜さんを休ませてしまってすみませんでした」
「………」
今度は咲桜が頭を下げたが、反応がない。
そろりと目線を上向けると、彼は固まっていた。
「かの、じょ……? ですか? 神宮室長の……?」