どうしよう。
本気で咲桜が、夜々子や箏子から離れたくなくなって、やっぱり結婚するのはもう少し先で! とか言い出したら。
まあ、待つけど。いつまでだって。
仲の良い家族そのものの咲桜と箏子の背を見て、流夜は少し嬉しい気持ちになる。
咲桜にはあれこれ言ったけど、やっぱり、咲桜が幸せそうにしているのが、自分の一番の幸せなんだ。
だからこれからも、その微笑みが絶えぬように――俺が、傍にいるんだ。
その日はまるで宴の席だった。元々酒を飲まない流夜と在義、夜々子は妊婦なので酒類はなし。
ダイニングテーブルいっぱいに料理皿が載っている。
今だけは、五人家族。
流夜が初めて体験する、『家族の時間』だった。
食事を終えると、咲桜と夜々子、箏子はソファの方で話していた。
咲桜の淹れた紅茶とともに。ダイニングテーブルにいる流夜と在義のところには、咲桜がコーヒーを置いて行った。
ずっと楽しそうな咲桜と夜々子、しかつめらしい顔でその隣にいる箏子を見て、在義が呟いた。
「……咲桜、夜々ちゃんの方ばかりいるけど、流夜くんはいいの?」
「え? まあ、咲桜の女好きは知ってますし、朝間先生への慕い方も半端ないですから。今更気にしても仕方ないと言うか」
「達観してるねぇ……え、女好き?」
「ん? はい。咲桜、男より女が好きじゃないですか。俺は例外らしいですが」
「…………えええええ⁉ 何それ! 咲桜ってそういうのだったの⁉」
「あ、ご存知なかったですか?」
「ご存知ないよ! まさか咲桜がレズの子だったなんて……」
おい咲桜。あの在義に気づかれていなかったなんて、お前ナニモノだよ。
そしてやっぱり生まれる誤解。



