咲桜が式場を出るのを見た流夜はため息をついた。
変らんのか、あいつは。
「龍さん、降渡頼む」
「おう」
と、蒼い顔の降渡を任せて咲桜が出たのとは反対の出口へ向かった。
降渡は、龍生に怒られてもネクタイを外さなかった。
「遙音の式だから」の一点張りで。
その主張はいいが、もう少しマシな顔色で言ってもらいたい。
吹雪はこういうとき頼りにならないので、龍生に任せた。
式場の外には、遙音と笑満、その両親がいるはずだが――
「………」
流夜、思わず黙った。
咲桜が、頼の胸倉を摑んで投げ飛ばすところだった。
「咲桜、やめさなさい。そんな恰好で」
「え? うわっ!」
……嫁に『うわっ』て言われた。
そこに傷付きながらも流夜は、頼に絞め技をかけようとする咲桜を後ろから捕縛した。
「咲桜、頼。場所を考えろ。遙音も、式場まで聞こえて来たぞ?」
「う……悪い……」
遙音が申し訳なさそうな顔をした。
……もっとそういうカオをすべき二人がいるんだが。
「咲桜も。頼には自由に撮らせるって前提でカメラ持たせたんだろ? 少しは退け」
「くっ……」
咲桜が痛みでもこらえるような顔をした。
(こーいうところが『日義の飼い主』なんだろうな……)
咲桜のことをずっと見て来たけど、頼への態度だけは変わらない。
自分の知らないうちに頼から告白もされたらしいが、友人関係に少しも影響が見られない。
それもどうかと思う流夜だ。