「うん。もうすぐ逢えるよ。笑満お姉ちゃんとびっきり綺麗で可愛いから、るなびっくりしちゃうかも」

「びっくりですか。こんなかおしちゃいますか?」

と、ムンクの叫びみたいな顔をして、両頬を手で押さえた。

可愛くて、咲桜はくすくす笑ってしまった。

「しちゃうかも。お兄ちゃんがいっぱい写真撮ってくれるから、またあとでみんなでお話しできるね」

「お兄ちゃん! ちゃんとおしごとしてくださいね」

「わーってる」

頼ははらりと手を振って、会場のカメラマンがいる方へ一人向かった。

頼は、一応笑満の側の私設のカメラマン、ということになっている。

頼なら好き勝手撮るだろうけど、腕は確かだから……と、咲桜も諦めている。

咲桜はるなと手を繋いで、友人たちが空けていてくれた前の方の席に向かう。

親族席の一列後ろを、咲桜の場所だとしてくれている。

「咲桜、その子って妹さん? 夜々子先生の娘の?」

自分たちの卒業後、養護教諭の朝間夜々子が咲桜の父と結婚して子どもを生んだことは周知のことだ。

咲桜は首を横に振った。

「ううん。草凪るなちゃん。頼が取材先で見つけたの。ご家族を亡くしちゃったから、今は頼が引き取って育ててるんだ」

そう答えると、「ええええ――⁉」と一斉に声があがった。

驚いて、もう並んでいた、遙音側の友人の席――一つ先輩の人たち――から視線が投げられる。

「日義何やってんの⁉」

「お、女の子を誘拐……⁉」

以前の咲桜と笑満と、同じ誤解をしていた。

まあそうだよね、と咲桜も慌てることはなかった。

「大丈夫。現地の警察なんかとはちゃんと手続きを踏んで連れて来たから。ルナ・クサナギって名前も本名だよ。ね? るな」

「はい。草凪るなです。頼お兄ちゃんがごめいわくとごめんどうとごやっかいばかりおかけしてすみませんでした」

深々と頭を下げるるな。

つられて会釈する二十代前半女子たち。

頼と一緒に暮らしているるなは、誰に対しても敬語で話す癖がついていた。

頼が教えたというよりは、頼の家族の影響が大きいだろうけど。