クラスメイトは興味深そうに吹雪や亡霊――もとい、降渡を眺めている。
「遙音を高校に行かせるためにって、お前よく自分の進路変えられたよね。僕無理だなー」
「吹雪」
「はいはい。黙っておくよ。咲桜、今日絆ちゃん来れないの? こいつどうにかしてほしいんだけど」
話を振られて、咲桜は強張った顔で説明した。
「絆先輩は今日、法廷(仕事)なんだ。でもほんと……来てもらえたらよかったね……」
無理にネクタイをした降渡は、今にも昇天しそうに顔色が悪い。
降渡は幼少時のトラウマで、首に何かが触れるのが駄目だそうだ。
咲桜も似たようなものがあったから――今はなんともないけど――辛い気持ちはよくわかる。
それでも、降渡は今日ここに来た。
「身内ってことなんだからネクタイしなくてもいいだろって、遙音からも言われたんだけどな。こいつどうしても、って」
「だって……遙音の……式だぞ……」
やっと喋ったと思ったら、流夜の右肩に手をついて喘鳴し出した。
救急車呼ぶべきかな。
咲桜は本気で考える。
「咲桜、この二人何者なの? 夏島先輩と知り合いなの?」
こそっと訊かれて、咲桜はありのままを話すことにした。
「雲居降渡さんと、春芽吹雪さん。流夜くんの幼馴染で、ほら、学校に来た二人だよ。遙音先輩の後見人って言うか……遙音先輩が師事してる人たちって言えばいいかな。先輩から頼まれて、三人は遙音先輩の親族席に列することになったんだ」
「そんで僕は咲桜の親友だね」
「ふゆちゃん、ややこしくなるからそれは今置いておいて」
「クールだねえ」
胸を張る吹雪と、降渡に手がかかっている流夜と、なんとか頑張っている降渡。
協調性、ゼロ。
「じゃあ、あの時の警察の人と探偵の人?」
「そう。ふゆちゃんが刑事で、降渡さんが探偵。それと私の事務所の先輩の絆さんが、降渡さんの奥さん……降渡さーん、生きてますー?」
思わず遠いところへ呼びかける感じで声をかけてしまった。
降渡がついにヨレヨレし出した。



