朧咲夜-番外編-【完】


「………」

咲桜は否定もフォローも出来なかった。

実際頼は、流夜と斎月に感化されてしまった。

「あーでもいいなー超イケメンの旦那」

「イケメンってか美丈夫って言葉が似合う感じじゃない?」

「えー、美形のが合うよー」

わいわい騒ぎだしてしまった。

これで流夜が来るだけならまだしも、今日は降渡と吹雪もいるのだ。

うーん、と咲桜は内心うなる。

と、咲桜が解決していないうちに。

「もー、降渡その顔やめてよ、鬱陶しいなあ」

「吹雪、今日くらいはおさえてやれ」

「ったく。だったらネクタイしなくてもいいじゃん。遙音も龍さんも、その辺りわかってるんだから何も言わないよ。――あ、咲桜―」

やたら目立つ三人が入って来た。

一人、死にそうな顔をしている。

女子たち、一瞬黙り込んだ。

ぶんぶん手を振っている吹雪に応えて咲桜が軽く手を振ると、ギラッとした視線を受けた。

ひうっと背筋が凍った。

また両側から捕縛された。

「ちょっと咲桜! 先生以外のイケメンはなんなの⁉ 一人亡霊みたいだけど!」

「今手を振った人は男⁉ 女⁉ もう一人は魂抜けてるけど!」

あ、あははー……と、咲桜は元気なく引き攣った笑みを浮かべるしか出来なかった。

な、なんと言おう……。

「咲桜かわいー。流夜ってほんと、咲桜に似合うのだけは選ぶのうまいよね」

咲桜に抱き付こうとした吹雪を、流夜が後ろから首根っこ摑んで止めた。

「うるさい」

「えー、親友に抱き付いて何がいけないの」

「すまないな、うるさい連中ばかりで」

流夜が咲桜の級友たちに謝ると、様々な反応があった。

「い、いいえっ!」

「お久しぶりです、先生!」

「あ、そっか。流夜、先生だったんだっけ」

……吹雪がトボけたことを、真顔で言った。