咲桜ががばりと抱き付いたので、小柄な夜々子は若干勢い負けしつつ抱き留めた。

「いいの⁉ 私流夜くんと一緒にいられるだけで最上級幸せなのに、夜々さんがお母さんになって妹まで出来ていいの⁉ 私死ぬの⁉」

幸せ過ぎて疑う方向がおかしい。

焦がれた咲桜の恋人になっても、こういうとき頭を抱えたくなる。

咲桜の女好きも変わっていない……。

嫁の妹に、嫁を奪られるんじゃないか不安になる。

まだこっちは結婚の約束だけだけど。

そんな騒ぎにも慣れた夜々子は、咲桜の頭を撫でた。さすが在義に長年片想いしていただけはある。

「わたし、ちゃんと咲桜ちゃんのお母さんになりたいわ。いいかしら」

「勿論です! むしろ反対する奴ぶっ飛ばします!」

相変わらずだった。そして夜々子に抱き付いたまま、ばっと父を見る。

「父さんありがとう!」

「咲桜はほんとに夜々ちゃんすきだよねえ」

呆れが混じった反応だった。

咲桜が俄然受け入れ態勢過ぎて拍子抜け、みたいな。

「それで、二人からの話は?」

在義に促されて、咲桜は顔を引き締めた。

とてとてと流夜の隣に戻る。

……よかった。戻って来た。

妹が出来る、夜々子が母になるという咲桜の夢過ぎる現実が見せられて、華取のままでいる! 結婚やめる! とか言い出されないか不安になっていた流夜だ。

「咲桜、いいか?」

「はい」

しっかり肯く返事があって、二人は在義に向き直る。

「二年も離れていたこと、お詫びします。離れてみて思い知らされました。俺には咲桜しかいません。咲桜さんと、結婚させてください」

「私も、流夜くんとずっと一緒にいたいです。流夜くんと結婚したいって、思います。お願いします」

流夜は、自分からお願いするものだから、と言ったのだけど、咲桜は自分から華取の家を出るのだから自分からも言うと引かなかった。

頑固咲桜は徹頭徹尾なので、流夜が折れたのだった。

在義は軽く息を吐く。そして苦笑した。