<数年ぶりの面談>
「和人は用意終わった?」
「俺はもう大丈夫だよ。千佳は?」
もう、いいなぁ。男性はこういうときあっという間に身支度終わっちゃうんだもん。
「ごめん、あたしまだ終わってない。先生と結花を迎えに行ってくれる? お茶とか用意しておくから」
あたしに至っては、まだ寝間着代わりのスエットだし、化粧だってまだしていない。
「分かった。行ってくる」
「結花は早く歩けないから、忘れないでよ!?」
いつもの和人の歩調に、結花ならなにも言わずに合わせてしまうと思う。でも今の結花の身体は一人じゃない。
「あいよー」
和人が部屋を出て行ってから、リビングのテーブルの上にお茶菓子を用意した。
結花の体調を考えれば本当は椅子の方が楽だったはず。でもうちのダイニングは二人用。
仕方ないから、バイト先にお願いして和室の備品の座いすを借りてきた。
そこまで終わらせると、部屋に入ってクローゼットを開ける。
ハンガーにかけてあった洋服は、数日前からこの日にと決めてあったものだから……。
「うん、分かった。大丈夫、こっちは準備終わるよ」
和人から電話で結花と先生が駅に到着したと知らせてきた。
そこからなら、この部屋まで結花に合わせてゆっくり歩いても10分ほどで着く。
ポットでお湯を沸かして、ちょうどできあがった頃に、外に声がした。
「千佳、先生たち来たよ」
「いらっしゃい」
和人が玄関の扉を開けて二人が入ってくる。
「忙しいところすみません」
テーブルに先生と和人にはコーヒー、結花とあたしはカフェインレスの紅茶を用意した。
「ちぃちゃん、そのくらい大丈夫だよ。気にしてたらなにも飲めないし」
結花は笑っていたけど、食事にもこれまで以上に気を遣っていると聞いていた。やっぱり今度こそ失敗したくないという思いが伝わってくる。
「なんだか、この二人を見ていると、高校生に戻ったように見えるな」
先生があたしと結花を見て笑う。
仕方ないよ、二人で申し合わせてそういう服装にしたんだもの。
結花はネイビーにクリーム色セーラー襟のワンピース。本来はウェストを調整するベルトがあるんだけど、お腹があるので、それをリボンのように結んで飾りにしていた。
あたしはさらに幼く見える。丸襟にレースのついた白ブラウスとライトグレーのベスト。赤チェックの膝丈スカート、フリルとリボンの付いた白いニーソックスというコーディネート。
それを見たときに、和人と結花が息を飲んだのにも気付いた。
「せっかくなので、数年前に戻りました」
「そうか。それじゃあ、四者面談を始めるか。この時間は当時に戻って原田と呼ぶことにする」
「久しぶりですね。そう呼んでもらうの」
嬉しそうに頷く結花を座椅子に座らせて、他のメンバーもそれぞれに腰を下ろす。
「二人とも元気そうでよかった。最後の半年は見てやれなかったから、申し訳なかった」
「小島先生、それはもうなしです。事情も分かってます。原田さんを助けられたのは先生しかいませんでしたから」
この場のメンバーなら、それは全員分かっている。あの当時の結花と彼女を支える先生の絆を知っていれば、二人がとった道というのはやむを得ないことなのだと。
「和人は用意終わった?」
「俺はもう大丈夫だよ。千佳は?」
もう、いいなぁ。男性はこういうときあっという間に身支度終わっちゃうんだもん。
「ごめん、あたしまだ終わってない。先生と結花を迎えに行ってくれる? お茶とか用意しておくから」
あたしに至っては、まだ寝間着代わりのスエットだし、化粧だってまだしていない。
「分かった。行ってくる」
「結花は早く歩けないから、忘れないでよ!?」
いつもの和人の歩調に、結花ならなにも言わずに合わせてしまうと思う。でも今の結花の身体は一人じゃない。
「あいよー」
和人が部屋を出て行ってから、リビングのテーブルの上にお茶菓子を用意した。
結花の体調を考えれば本当は椅子の方が楽だったはず。でもうちのダイニングは二人用。
仕方ないから、バイト先にお願いして和室の備品の座いすを借りてきた。
そこまで終わらせると、部屋に入ってクローゼットを開ける。
ハンガーにかけてあった洋服は、数日前からこの日にと決めてあったものだから……。
「うん、分かった。大丈夫、こっちは準備終わるよ」
和人から電話で結花と先生が駅に到着したと知らせてきた。
そこからなら、この部屋まで結花に合わせてゆっくり歩いても10分ほどで着く。
ポットでお湯を沸かして、ちょうどできあがった頃に、外に声がした。
「千佳、先生たち来たよ」
「いらっしゃい」
和人が玄関の扉を開けて二人が入ってくる。
「忙しいところすみません」
テーブルに先生と和人にはコーヒー、結花とあたしはカフェインレスの紅茶を用意した。
「ちぃちゃん、そのくらい大丈夫だよ。気にしてたらなにも飲めないし」
結花は笑っていたけど、食事にもこれまで以上に気を遣っていると聞いていた。やっぱり今度こそ失敗したくないという思いが伝わってくる。
「なんだか、この二人を見ていると、高校生に戻ったように見えるな」
先生があたしと結花を見て笑う。
仕方ないよ、二人で申し合わせてそういう服装にしたんだもの。
結花はネイビーにクリーム色セーラー襟のワンピース。本来はウェストを調整するベルトがあるんだけど、お腹があるので、それをリボンのように結んで飾りにしていた。
あたしはさらに幼く見える。丸襟にレースのついた白ブラウスとライトグレーのベスト。赤チェックの膝丈スカート、フリルとリボンの付いた白いニーソックスというコーディネート。
それを見たときに、和人と結花が息を飲んだのにも気付いた。
「せっかくなので、数年前に戻りました」
「そうか。それじゃあ、四者面談を始めるか。この時間は当時に戻って原田と呼ぶことにする」
「久しぶりですね。そう呼んでもらうの」
嬉しそうに頷く結花を座椅子に座らせて、他のメンバーもそれぞれに腰を下ろす。
「二人とも元気そうでよかった。最後の半年は見てやれなかったから、申し訳なかった」
「小島先生、それはもうなしです。事情も分かってます。原田さんを助けられたのは先生しかいませんでしたから」
この場のメンバーなら、それは全員分かっている。あの当時の結花と彼女を支える先生の絆を知っていれば、二人がとった道というのはやむを得ないことなのだと。