「しっかし、茜音が沖縄に行きたいというとは思わなかったなぁ」
「だって、まだ一度も行ったことないし。わたしだって行きたいところはあるんだよぉ」
ゴールデンウィークでごった返す羽田空港。朝早くに集合したのは、茜音たち三人に健を加えたメンバーだった。
「それにしたって、四人でってのは予想外だったし? 健君と二人で行けば良かったのに?」
「だって、なんか卒業旅行もバタバタしててできなかったし……。佳織には悪かったよね。原田君には……」
佳織にも今は1つ年下の彼氏がいる。本当はその彼の分も構わないとしてあったのだけど、
「ほら、今年は受験生だし。終わったらどこでも連れてくからって。今回はお土産買って帰ることで許してもらったわよ」
「そっかぁ。佳織も厳しいなぁ」
急なスケジュールだったこともあって、全員が固まりに席が取れなかったと佳織は謝っていたけど、飛行機で行けるだけありがたいと茜音は思っていた。
「なんか……、運転手お願いしちゃってごめんねぇ」
今回の行程では、佳織の下調べの結果でも、公共交通機関だけでは不測の事態に十分な足が確保できないと言うことも予想されたことから、健がドライバーとしてアサインされている。
「それは構わないけど、2泊3日で行くにはちょっと忙しいかも」
「うん。でも仕方ないよ。それしか取れなかったし」
やはりゴールデンウイークでは限られたスケジュールの中で組み立てるしかなかったけど、茜音はそれでも決行することにしていた。
「乗り継ぎとか席が悪いけど許してちょうだい」
「いいよ。あんなに突然だったのに、なんとかなったんだし」
佳織としては、飛行機の座席をまとまって取れなかったことを詫びていたが、全員が同じ便で行けるだけよしとしていた。
「でも、結局むこうでどうなるかは分かんないんだよね」
「うん……。みんなは大丈夫だろうとは言ってくれているけどね」
佳織の計らいで、並びの席にしてもらった茜音と健。言葉や服装とは裏腹に、バカンス旅行という雰囲気ではなく、どこか重要な会議にでも行くような気分だ。
途中、化粧室に立ったときにちらりと見た菜都実の表情もやはり固く緊張しているように見えた。
羽田空港から沖縄・那覇空港まで3時間。そこから乗り換えを挟んで宮古空港まで1時間。直行便ならば現地でも十分な時間がとれるけれど、朝6時半のフライトではそれこそ前泊が必要になってしまうから、離島への旅のハードルを上げてしまう。
窓際でなかったので、健と話しながら時間をつぶして、経由地の那覇空港に降り立つ。
「ついに沖縄まで来たぁ」
「そっかぁ、茜音でも初めてか」
飛行機から出たその瞬間に空気が違う。強い日差しに照らされている景色が、飛行機の機内で薄暗さに慣れた目には厳しいくらいだ。
空港のコンコースに南国の花が飾られていて、構内に流れるBGMも三線を使っている独特の音色の曲と気がつけば、やはり自分たちの普段の生活圏とは違うことを実感する。
乗り換え時間があるが、預けた荷物はそのまま目的地に向かってくれるので、昼食を調達に佳織と健が行き、茜音と菜都実が待合いロビーに残った。