「いやぁ、まさか本当に実現しちゃうもんだねぇ」

「茜音の交友関係を辿っていくと、みんなそれぞれの職業だから、どうにかなっちゃうんだよね。自然に集まっちゃうんだなぁ」

 入籍を済ませてから随分時間を経ての挙式ということもあり、普通の形ではなく「大真面目に楽しんでやろう」と、美鈴を中心としてチャペルでの挙式も席を決めず、またバージンロードも3組を一度に入場させたりとアレンジ。披露宴も「固いし1番の主役はいないから」と席を決めず、屋外パーティー形式にしてしまった。

 各個人の写真も撮ったし、3組を混ぜたポーズもたくさん撮った。



「なんか、ひと区切りだねぇ」

 男性三人がホテルのバーラウンジに消えたので、女子側は私服に戻してからプールサイドのカフェに陣取った。

 こんな三人娘の相手となる男性陣も、旧知のように自然と仲がよくなっていたので、こんな組み合わせも珍しい話しではない。

「とにかく、茜音はもう落ち着いたし、あたしも、あと何年かしたら、横須賀に戻るような話でいるよ。遊びに来るなら早いうちがいいかもね」

 どうやら、菜都実たちに継ぐときにはお店を改装する予定だとマスターからは聞いている。

「佳織はようやくこれからだもんね。あ、美鈴ちゃんお疲れさまぁ。こっちにおいでよぉ」

 今回の一番の協力者は彼女であると誰もが認めている。

「いいんですか?」

「遠慮しないで」

 最初に美鈴の話を聞いたときには、やはり茜音を苦しめてきた家の人物ということで佳織だけでなく菜都実も警戒していた。

 しかし、実際には茜音の奪回作戦を最終的に諦めさせたり、家から勘当も覚悟の上で、自らのパートナーと結婚するなど、その行動力は従姉妹の茜音と似たり寄ったりだと分かり、その誤解も解けた。

 なにより、彼女の尽力が無ければ今回の無謀な計画は現実にできなかった。

「やっぱり、従姉妹ってことで遠慮無く言えちゃったのもあったよねぇ」

「本当に、今回はお仕事って感じじゃなくて、やっていて楽しかったですよ。こんなこと出来るんだって。みんなのアイディアが凄いなって思って。なんか、一緒になって楽しんじゃったのもちょっと反省だったり」

 そこに、既に西村姓となっている千夏も加わった。本当は茜音と同じチームで仕事をしているから、この沖縄には来られない予定だったのを、せっかくだからと珠実園のみんながカバーしてくれて、今朝の沖縄入りで駆けつけてくれた。

「あれ? 和樹くんは?」

「大丈夫。副園長が連絡つけてくれて、みんなで飲んでますよ」

 パーティーのあと、今回の旅行を許してくれた職場のみんなへのお土産を選んでいたという。

「そっかぁ。千夏ちゃんところも一緒だったらもっと面白かったのになぁ」

「3組合同だって大変だったんだから、美鈴ちゃん可哀相だよ」

「でも、今回担当させてもらえて、本当に楽しかったし、その一員にしてもらえたなんて、光栄です。ほんと茜音さんには声もかけられないと思っていたから」

 このチームでは美鈴が茜音と最後に出会ったメンバーとなる。

 最初は口も聞いてもらえないと思っていた存在が、今では両親以上に相談できる相手になっている。

「茜音はね、本当に強くなったよ。それはあたしたちからも太鼓判押せる。だから、せめて、この五人の間だけでも、茜音を裏切ったりしないで欲しいんだ。久しぶりに会ったけど、なんてのかな、安心感があったなぁ。リーダーが戻ってきたってそんな感じ?」

「菜都実、言い過ぎだよぉ」

 この中でリーダーと言ってもそれは形だけで、その場の事態に一番得意なメンバーが対応するのは高校時代から変わらないし、それは自分たちが一番大切にしてきた感性だから。