その年のクリスマス、未来と翔太はアウトレットにお互いのクリスマスプレゼントを探しに来ていた。

 二人とも高校生という身分なので、高い買い物は出来ないけれど、クリスマスのイルミネーションを楽しむにはここだと決めていたから。

「未来にあんな過去があったなんて、本当は最初信じられなかったよ」

「だって、言えなかったよ。やっぱり、いろいろあるから。翔太君にも話すか本当に迷ったし、その時は失恋覚悟だったんだから」

 あの理事長室での一件以来、二人の仲は急速に接近した。

 翔太は珠実園に遊びに行くようになったし、未来も翔太を彼氏と紹介した。同時に、翔太の家では祖父の働きかけもあって、未来を温かくもてなしてくれた。

 この頃には、未来の過去がどうと言う連中は現れなくなっていた。

 彼女は、自分の生いたちからこれまでの半生を隠すこと無く話したからだ。

 小学校高学年や中学校の頃は、周囲に対して攻撃的になってしまったこと。しかし、元来の自分の性格をいち早く見抜いて方向修正に導いてくれたのが、珠実園で兄と慕っていた男性と、櫻峰高校で圧倒的知名度を誇る片岡茜音だったことなどだ。

 結城家でも、未来の生いたちからすれば寂しさの裏返しも当然あると理解してくれた。そのことで非行や問題行動に走らなかったことを誉めた。

 そして何よりも、翔太も中学生の頃には何人かのガールフレンドがいたけれど、あれほど真剣に、自分から彼女を守りたいと言って紹介してきたのは未来が初めてだという。

 過去がどうであれ、未来に責任は無い。きちんと生きてきたことに胸を張るように諭してくれた。そして、理事長の時と同じように、翔太のことを見守って欲しいと逆に頼まれていたほどだ。



 そんな二人のことは、周囲も温かく見守るようにしたというのがこの秋から冬にかけての話。

 アウトレットの雑貨店でお互いのプレゼントを選びあって、フードコートでクレープを食べていた時だった。

『このあと13時から、アトリウム広場におきまして、今井(いまい)千尋(ちひろ)さんのインストアライブが開催されます。みなさまお集まりください』

「えっ? すごくない?」

 館内放送を聞いた二人も顔を見合わせる。

 最近、ラジオやテレビのランキングでも時々紹介されるシンガーソングライターで、この秋に発表された『あの日の青空』という曲がブレイクしている。

「見に行ってみようか」

「うん!」

 未来も最初はそんなメディアから入った一人だ。最初は何気なく気に入って聞いていたのだが、最近のテレビ放送の時に画面に表示された歌詞を読んでいたとき、突然何かが引っ掛かるような気がした……。