まさか落としたものを口にするとは思っていなかった。驚く玲燕に対し、天佑は平然としている。
「本当だ。懐かしい味がする」
「……懐かしい? 天佑様は昔、茘枝をよく食べたのですか?」
「ああ、そうだな」
天佑はそれ以上話すことなく口を噤み、玲燕も突っ込んでは聞かなかった。
隣の部屋に移動して素早く衣装を替える。おずおずと戸を開けると、天佑は既に官吏──甘天佑になっていた。
「足元が悪いから気をつけろよ。鈴々、少しの間留守は頼む」
天佑は石灯籠の下に開いていた穴に先に下りながら、玲燕と鈴々に声をかける。
「はい、お任せください!」
鈴々が力強く頷くのを見届け、天佑はひらりと地下へと下りていった。
真っ暗な坑道のような、けれど坑道と呼ぶには狭すぎる人通路を案内されて行き着いた先は、倉庫のような部屋だった。
いくつも並ぶ棚には、丸められた竹簡がぎっしりと詰まっている。反対側を見ると、紙の巻物がいくつも積まれていた。
「ここは、書物庫ですか?」
「そうだ。光琳学士院(こうりんがくしいん)の持つ書庫のひとつだ」
「光琳学士院……」
「本当だ。懐かしい味がする」
「……懐かしい? 天佑様は昔、茘枝をよく食べたのですか?」
「ああ、そうだな」
天佑はそれ以上話すことなく口を噤み、玲燕も突っ込んでは聞かなかった。
隣の部屋に移動して素早く衣装を替える。おずおずと戸を開けると、天佑は既に官吏──甘天佑になっていた。
「足元が悪いから気をつけろよ。鈴々、少しの間留守は頼む」
天佑は石灯籠の下に開いていた穴に先に下りながら、玲燕と鈴々に声をかける。
「はい、お任せください!」
鈴々が力強く頷くのを見届け、天佑はひらりと地下へと下りていった。
真っ暗な坑道のような、けれど坑道と呼ぶには狭すぎる人通路を案内されて行き着いた先は、倉庫のような部屋だった。
いくつも並ぶ棚には、丸められた竹簡がぎっしりと詰まっている。反対側を見ると、紙の巻物がいくつも積まれていた。
「ここは、書物庫ですか?」
「そうだ。光琳学士院(こうりんがくしいん)の持つ書庫のひとつだ」
「光琳学士院……」