「そうなのですね。茘枝は貴重なのに、私などに渡してしまって翠蘭様が叱られませんか?」

 玲燕が茘枝を食べていたのはたまたま近くの林に茘枝の木が生えていたためだ。
 光華国では茘枝は一般的に高価な食材とされている。余ったものを勝手に渡してしまっては、翠蘭がお咎めを受けるのではないかと心配になった。

「あら、大丈夫よ。桃妃様はとてもお優しいのよ。こういうお菓子や果物が余ったときは、『あなたたちで食べなさい』って言って分けてくれるの。これも、沢山採れたから皆さんにお配りするよう言われて女官仲間に持って行くところ」

 翠蘭は笑って片手を振ると、辺りを見回してから少しだけ玲燕に顔を寄せた。

「その点、梅園宮は大変よ」
「何かあったのですか?」

 玲燕は興味を引かれて聞き返した。
「梅妃様は一番最初に後宮にいらしたでしょう? もう一年半も経つのに未だにご懐妊されないから、ご実家からせっつかれていて凄くイライラしているみたい」
「ああ、なるほど」

 後宮は女の戦いの場だ。
 誰が一番、皇帝の寵をを得るか、そして、誰が一番最初に皇子となる男児を産むのか。皆が常に競い合っている。