「なかなかよい洞察力だ。だが、初対面の相手に食わせものとはいただけないな。俺は朝廷からの使いで参った甘《カン》|天佑(テンユウ)だ」
「朝廷?」
少年の眉がぴくりと動く。
「ああ、この地域に著名な錬金術師がいると聞いて訪ねて来た。道中で錬金術師の所在を尋ねたらここを紹介されたのだが、今は不在か?」
「……ここには私しかいない」
先ほどまでの明るさが嘘のような固い声で、少年が答える。
「何?」
天佑は少年の返事に、言葉を詰まらせた。
風の便りに、ここに著名な錬金術師がいると聞いていたのだが。子供しかいないとは、想定外だった。
「……では、訪問先を間違えたようだ。先ほども言った通り、俺は錬金術師を探している。この辺りで一番著名な錬金術師はどこにいる?」
「錬金術師など、都に腐るほどいるだろう」
少年はそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに答える。